Hoodoo Brown BBQ — 煙の向こうにある、アメリカの秋

マンハッタンから北東へ、車で約1時間半。

北上するにつれて、木々の紅葉が深まっていく。赤、オレンジ、黄色。ニューイングランドの秋は最高だ。

今回の目的は、いかにもアメリカらしいBBQ。

日本でバーベキューといえば、川岸や公園で炭をおこし、お肉や野菜、魚介類を焼く光景を思い浮かべる人が多いだろう。

でも、アメリカのBBQは肉、肉、そして肉。

向かったのは、コネチカット州リッジフィールドにある Hoodoo Brown BBQ。

何度も訪れている、お気に入りの一軒だ。父の日には、お店の外まで長い行列ができるほど、地元の人たちにも愛されている。

最初の一皿

ここに来たら、まず注文するのが Fried Green Tomatoes。

まだ熟していない青いトマトを揚げたものだ。

特別な味付けがされているわけでもなさそうなのに、ここに来ると必ず頼んでしまう。

ソースをつけずに食べてもおいしいけれど、つけるとさらにおいしい。

未熟なトマト特有の青っぽい酸味のおかげだろうか。揚げ物なのに不思議と軽く、いくらでも食べられそうになる。

パンまでおいしいサンドイッチ

The Battle of Ridgefield。

ブリスケット(牛の肩バラ肉)に、細かく刻んだカリカリの豚バラ肉、そしてリンゴ酢を使ったコールスローを挟んだサンドイッチ。

少しパサッとしたパンの食感が、ジューシーなお肉とよく合う。

アメリカのサンドイッチには、ソースが多すぎて、パンがすっかり湿ってしまっているものも少なくない。

でも、ここのサンドイッチは違う。

バンズそのものの味も楽しめる程度のソース加減。そのバランスが絶妙だ。

実は、もう一つ迷ったメニューがある。

Hogzilla。

プルドポーク、スペアリブ、豚バラ肉、そしてフライド・グリーン・トマトを挟んだ、なんともアメリカらしいサンドイッチだ。

こちらも以前食べて、とてもおいしかった。

でも今日は、プルドポークとリブをそれぞれ味わいたかったので、The Battle of Ridgefieldにした。

BBQを味わう

Pulled Pork。

じっくり火を通した豚の肩肉を、細かくほぐしたもの。

紫玉ねぎのマリネとピクルスが添えられている。玉ねぎのマリネは、頼めば無料で追加してもらえるようだ。

紫玉ねぎの酸味が加わることで、ポークの脂の旨みがさらに豊かになる。まるで三重奏が五重奏になるように、味わいに奥行きが生まれる。

テーブルには3種類のBBQソース。

それぞれ試してみるのも楽しいけれど、何もつけずにそのまま食べても十分おいしい。

そして Pork Spare Ribs。

見た目から想像するのは、脂がたっぷりの、こってりした味。

ところが、食べてみると意外なほどあっさりしている。

あっさりしているのに、パサついていない。しっとりしていて、お肉の旨みが残っている。

これは家庭では到底再現できない味だと思う。

薪を使い、16時間かけてじっくり燻製しているからだろうか。どのお肉も余分な脂がほどよく落ち、重たさを感じさせない。ほのかに香る薪の煙が、味わいにさらに奥行きを与えている。

お店の裏には、大きな燻製器が何台も並んでいる。

秋の紅葉と青い空。その中を、燻製器から煙がゆっくりと立ち上っていく。

その光景が、なぜだか懐かしい気持ちにさせる。

日本で育った私に、懐かしいはずはないのだけれど。

最後の一口まで

ここに来るもう一つの楽しみが、Banana Bourbon Cream Pie。

見た目はアメリカのダイナーでおなじみのバナナクリームパイ。でも、これはレベルが違うおいしさ。

まず、甘さが優しい。

こういう見た目のケーキは、食べ終わった後まで甘さが口に残り、塩気のあるものを食べて中和したくなることが多い。

でも、このパイは違う。甘さがさらっとしていて、後に残らない。生クリームも、ちゃんとおいしい。

たっぷりお肉を食べた後でも、一切れをぺろりと食べられてしまう。

いけない。半分だけ食べて、残りは持ち帰ろう。

そう思いながら、結局全部食べてしまった。

初めてこのお店を訪れたときのこと。

店の雰囲気から、正直なところデザートにはあまり期待していなかった。

サーバーにデザートを勧められて断ると、こんなことを言われた。

「絶対に気に入ると思うから、ぜひ食べてみて。おいしくなかったら私のおごりにするから!」

そこまで言うなら、と注文してみた。

それ以来、ここに来て、このパイを食べずに帰ることができなくなった。

自分が勧めるものを、そこまで自信を持ってお客に差し出せる。

こういうサーバーは、ぜひお店に大切にしてもらいたいと思う。

お肉だけではない魅力

店内には大人数のグループも多い。地元の家族や友人同士の集まりなのだろうか。

テーブルを囲んで、楽しそうに食事をしている。気取らず、カジュアルな雰囲気が心地よい。

スタッフはみな手際がよく、サービスも気持ちがいい。

食べきれなかった料理を持ち帰る際には、ソース用の小さな容器も用意してくれた。

おかげで、家でもソースを添えておいしくいただくことができた。

こういうさりげない心配りがうれしい。

音楽は流れているけれど、会話を邪魔するほどではない。

おいしい料理と、気持ちのよいサービス。

マンハッタンから車で1時間半かけてでも、また訪れたいと思うお店だ。

M at the Table — 私の感想

また訪れたい?

もちろん!

一人でも訪問しやすい?

はい。バーカウンターがあり、私が訪れた時も、年配の女性が一人で食事を楽しんでいた。 一人でも気兼ねなく過ごせる雰囲気だと思う。

一人と複数人、どちらがおすすめ?

二人以上がおすすめ。私のように、あれもこれも味わいたい食いしん坊なら、なおさら。

料理の量は?

今回は二人ですべてシェアし、アペタイザー1品、サンドイッチ1品、BBQ2品、デザートを注文した。少し持ち帰るくらいの量だった。もう一人いたら、BBQをもう1品とサイドディッシュを追加したい。

価格は?

チップ込みで110ドル。内容を考えると妥当な価格で、十分に価値があると思う。

店内の音は?

音楽は流れているが、会話を邪魔するほどではない。グループ客も多く、店内は賑やかだが、私には心地よい賑やかさだった。


Observations, not scores.

この記事を英語で読む →

Comments

One response

Leave a Reply

Discover more from M at the Table

Subscribe now to keep reading and get access to the full archive.

Continue reading